神戸ビーフは全ての和牛肉の頂点に立つ存在じゃなかったの?
まるで少女漫画の世界のようだが、私とライバルのあの子は、同じ1人の男性を好きになり、張り合っていた。この男というのも、今になって考えれば信じられないほどデリカシーのかけらもない奴で、私とあの子の両方にモテていることを鼻にかけ、私たち両方にいい顔をしてこの三角関係を楽しんでいた。お昼休みには交代で手作り弁当を彼に届け、ライバルに負けないよう、自分の番の時は毎回、凝りに凝ったお弁当も届けた。でも、最終的に彼の彼女の地位を射止めたのは、私ではなくあの子の方だった。はっきりとした理由は聞けなかったが、性格でも容姿でもないというのだから、お弁当の差だったのだろう。
でも、私が作っていたお弁当は、自分で言うのもなんだが、常に最上級のものだったはずだ。栄養バランスをきちんと考え、彩りよく、彼の嫌いな食材は徹底的に排除した。使用する食材は常に旬のもので、牛肉なら最高級神戸牛。魚だって野菜だって、1番の産地から新鮮なものを取り寄せて作った。それなのに選ばれたのは彼女。なぜだ。神戸ビーフは全ての和牛肉の頂点に立つ存在じゃなかったのか。
肉の断面に綺麗にサシが入った、但馬牛の中でも特別な基準に達している特別な牛肉。日本で1番厳しい認定基準を持つ最高級の神戸ビーフだ。どのような調理法でも肉自体の素晴らしさを隠すことはできない、口に入れた途端に舌の上でとろける、魅惑のビーフ、神戸牛。デリカシーのかけらもない奴には、本当はもったいないくらいの食材を使用して作った弁当だ。それが彼女の何に負けたというのだろうか。
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彼にフラレたという悲しさ、悔しさよりも、私の作ったお弁当の価値がわからないバカな男と、その男に選ばれた女に呆れた。ある意味お似合いだと思って、それ以上追うことは止した。多少の傷心は確かにあったが、神戸ビーフの素晴らしさをわかっている、私にふさわしい男性を他に探そうと思う。